砂川しげひさからの伝言
 未来を生きる君へ

 いつまでも若いと思っていたら
気が付いたら60歳を過ぎていま
した。
 なんとなくおれの人生てこんな
もんかなあ、などと自らを総括す
る気分になっています。
いかん、まだ熟年期のまっただ中
なのに。
 と発奮しては、そうはいっても
なあ、ここんとこ前立腺も肥大し
ているしなあ、部分入れ歯も入っ
とるしなあ、などと弱気が襲いか
かってくる。
 このようにオタオタしている昨
今のワタクシであります。
 こんなワタクシでも若い頃は元
気がありました。
 若いあなた!
 カネはなくてもヒマがいっぱい
ある君よ!
「自分は特別なんだ」という意識
を持ちましょう。
 口にすると鼻持ちならない言葉
だけど、黙っておればいい。
 心の奥の奥でにんまりほくそ笑
んでおればいいのです。
 22歳で、大阪から漫画家を志
して、単身上京した時。
 出版社へせっせと原稿の持ち込
み みをしては、突き返される日々
だった。
 だけどくさったりしなかった。
「自分は特別」という意識があっ
たからです。
 志を抱いたら、必ず成就する。
 そう思い続けていると、何か大
きな力が、自分をしっかり支えて
くれている感じがしたのです。
 他人からみればただの「うぬぼ
れ」かもしれない。
「うぬぼれも極めれば天才だ」
 これが私の信念です。
 一番いけないのは、下を向くや
つ。目のトロンとしたやつ。
 若い君よ。もうひとつ。
 無趣味なんて、人間の風上にも
おけませんゾ。
「クラシック音楽」を聴く趣味が
いいです! 「なぜクラシックだ」
という愚問を投げかけてはいけな

い。
 私の体験から得た至福の結論で

す。
 中でもモーツァルトの音楽が神
がかっていていいです。
「うぬぼれ」も時には周りから誤
解を招きます。
 そんな時、人知れず落ち込んだ
りします。
 そんな時こそ、モーツァルトを
聴くと、よかったのです。
 だから君も、趣味を持ちましょ
う。うぬぼれてい続けるために。
 (漫画家)

 05年2月6日付/朝日新聞朝刊