ラジオ深夜便


 ぼくはベッドの枕もとに小型のラジカセを
置いて寝ます。
 寝るのはだいたい深夜便がはじまる11時
二十分頃。
 ぼくはすぐには深夜便を聞かないのです。
なぜか落語とくに志ん生のテープをかけます。
「火焔太鼓」「三軒長屋」「風呂敷」「替り
目」などを聴きながら寝ます。だいたい毎日
同じものを聴きます。
 ほとんど毎日同じものを聴いていますと、
志ん生のどもり具合やエーという間が、睡眠
を誘うのですね。
 体調がいいとだいたい話の枕の2、3分で
寝てしまいます。
 さいきんは上方漫才とくにいとし・こいし
ダイマル・ラケットエンタツ・アチャコを聴
きます。
 いまの漫才みたいにけたたましくないので
安らぎます。ゆっくりしたテンポや間がとて
も心地よいのです。
 とくにエンタツ・アチャコがいいですね。
 そうやってだいたい5分以内には寝ます。
それから熟睡して、だいたい2時頃に目が
覚めます。
 こっからが深夜便の登場です。
 暗闇の中で枕もとのラジカセを手さぐりで
探して、スイッチを押します。
 ぼくの深夜便の始まりはロマンチックコン
サートです。
 このへんはうつらうつらしておりまして、
映画音楽や、ポピュラー音楽なんかを聞いて
おります。
 クラシックが好きなのに、なぜか深夜は聴
きたくありません。なぜでしょう。
 しばらくして、また寝てしまいます。
 こんど目が覚めるときは、決まって4時で
す。ニュースを聞いて、それからが「こころ
の時代」です。夏なら、カーテン越しに外が
明るくなります。
 ぼくが深夜便ファンになったのは、この四
時台の「こころの時代」にすっかりハマって
しまったからです。
 最初の頃の深夜便は中村充アナがアンカー
をよくつとめておられました。この人の深夜
の声がとても心地よかった。
 それに最初の頃はいまほど聴衆者の便りが
多くなくて、アンカーの独自の話がたくさん
聞けました。
 中村アンカーが「こころの時代」を聞いた
あと、ご自分のことばで感想を述べられるの
がいつも的を得ていて感心しました。
 一時間近くテープが流れているのですから
中にはうつらうつらしているアンカーだって
いてもおかしくないと思うのですけどね。
 最初の「こころの時代」は宗教の話が多く
て、とても関心をひきました。
 中村元さんの「仏教教典を読む」これなど
3週間にわたって放送されました。
 とても専門的ですが、いつかはうとんの中
でうつらうつらして聴くにはもったいないと
いう気がして、こころの時代はしっかりタイ
マーでセットして録音することにしました。
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