ヘンな輩

 春になるとヘンな人間とボケ人間が
横行するから困る。
 この間、住宅街を歩いていたら、向
こうから一人の若者がやってきた。そ
してぶつかりそうになって、向き合っ
たまま立ちん坊になってしまった。
 野中の一本道じゃあるまいし、何も
俺の歩いている前に、わざわざ歩いて
こなくてもよさそうなものだ。
 ぼくはその時ウオークマンを聞いて
いた。この時はじめて知ったのだが、
耳をふさがれると、思考力がにぶるら
しい。この場合どう対処していいのか
よく分からない。
 相手も相当にぶいらしい。同じよう
にジッとしていた。よく見ると相手も
ウオークマンを聞いていた。
 結局、われわれの行き詰まった状況
を解決してくれたのは、ゴミ収集車だ
った。うしろから「ブッブー」と一発
発して事態はここで解決した。
 この間コンビニエンス・ストアで、
カマボコだのハンバーグだの、ビール
だのいろいろと買い物をした。レジで
店員が三千二百四円といった。
 こういう場合、まず四円という端数
がぼくの頭を駆け抜けた。ポケットに
一円玉がジャラジャラあることに気が
ついてニンマリした。
 そこでまず四円を出してそれからお
札の三千円を渡して釣り銭を待った。
 いつまでたっても店員はジッとした
ままだ。ぼくも、釣り銭をジッと待っ
た。
 そのうち、別の客が店のドアを開け
て入ってきた。その時、春風もいっし
ょに入ってきてぼくの頬をかすめた。
 ここでハッとして、もう千円足して
釣り銭を待つのが正しいことに気がつ
いた。そんなことにおかまいなく、店
員はいつまでも能面みたいな表情で待
っていたのだ。
 まったくヘンな奴らだ。春は気をつ
けよう。

 (93年6月掲載誌不明)