フィッシャー=デイースカウ&ひばり

 世界で偉大な歌手を上げるとすれば、フィッシャー=ディースカウと美空ひばりである、 といったのは岩城宏之氏である。卓見である。百年にひとりの天才だと激賞したのは、たしか山田耕作であった。
ぼく自身ひばりのファンで、フィッシャー=ディースカウのレコードは一枚も持っていないが、 ひばりのレコードは五枚もある。
ひばりの素晴らしいところは、リズム感の良さと低音域の張りのある艶っばさである。 艶っぽさは演(艶)歌の生命である。その生命を歌
ってひばりは三十八年ものあいだ「演歌の女王」として君臨しているのだ。
 このことは世界の声楽界においても稀有のことで、 マリア・カラスもシユヴアルツコップも遠く及ばない。
 ひばりがもしクラシックを勉強していた…いや、仮定するに及ばない。 彼女の天分からすればいまのひばりでも十分クラシックを歌えると確信している。
 たとえば、シューベルトの「岩の上の羊飼い」D965。この歌曲はピアノ、 クラリネットの伴奏つきが、メロディがなんとも演歌調である。ためしに 「港町十三番地」の歌詞を当てはめて歌ってみたら、ピッタリ決まるのだ。 ミュラーの歌詞も十三番地も心情は同じようなものだ。
 べ二タ・ヴアレンテもいいが、なんとかわが実空ひばりにこのシューベルトを 歌ってもらえないものか、切に望む次第。

フィッシャー=デイースカウへ